研究概要 |
澱粉製品の中には小腸における消化を免れ,大腸に達する澱粉成分の存在(難消化性澱粉:RS)が認められている。こうした食事成分は,食物繊維(DF)と同様に腸内環境の制御を介して生体機能調節に寄与していると考えられる。本研究においては,実験動物として5週齢のWistar系雄ラットを用い,セルロースパウダー(CP)を対照として,当研究室において調製したRSとコンニャクマンナン(KM)および市販ペクチン(PE)をDFレベルとして4%および8%となるように実験試料に添加し,3週間飼育することにより,食事成分としてのRSの生理効果をDFと比較検討しながら腸内環境の制御効果の観点から解析を加えた。昨年の結果においてRSの摂取は肝臓,血漿の脂質代謝改善効果が期待できることを示したが,この結果を踏まえ,本年度においては,RSの効果の発現機構の一つとして考えられる消化管における作用について検討するために,糞からの中性及び酸性ステロイドの排泄状況について検討した。胆汁酸の糞中排泄については,RS群,KM群で低い傾向であったが,PE群では逆に高い傾向があった。コレステロールの糞中排泄については,CP群に対して他の群で高い排泄傾向が示され,特に8%PE群において高かった。しかし,コレステロールの二次代謝物であるコプロスタノールの糞中排泄量は,CP群で高く,他の群では有意に低く,DFレベルの増加はより顕著な低下をもたらした。中性ステロイドとしての排泄量は,CP群に対して8%RS群,8%KM群では低い傾向が,8%PE群では高い傾向が認められた。以上の結果から,PE群においては,胆汁酸やコレステロールの排泄増加(吸収抑制)に基づく効果が強く現れた結果であるのに対して,RS群の効果はこれらの排泄増加に基づくものではなく,腸内環境の改善を介した生体内生合成の抑制効果によることが示唆された。
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