シスチン過剰食をラットに与えると、3〜7日後に血清コレステロールが上昇する現象を解明するために、コレステロール合成速度(HMG-CoA 還元酵素)、分解速度の測定、肝臓HMG-CoA 還元酵素mRNAの測定を行った。 1 シスチン過剰食を3、5、7日間与えると血清コレステロールは基本食と比較すると有意に増加した。 2 血清VIDL、LDLのコレステロール含量はシスチン過剰食の摂取により上昇した。 3 肝臓コレステロール合成酵素である活性型HMG-CoA還元酵素活性は3日後では有意に増加した。しかし、7日後では両群の差は小さくなった。一方、全活性も活性型と同様増加した。 4 肝臓HMG-CoA還元酵素mRNAはシスチン過剰食を3日間摂取すると約1.8倍に増加した。7日間摂取すると約1.3倍に増加していたが対照群との差は若干小さくなった。さらに、3日以内における変化を調べたところ、摂取後1日ではむしろシスチン摂取によって低下した。2日後、3日後では1.6〜1.7倍に増加した。 肝臓HMG-CoA還元酵素mRNAのトランスクリプション速度の測定は現在進行中である。以上の結果、シスチンの摂取による血清コレステロールの上昇は肝臓HMG-CoA還元酵素mRNAを増加させ、ついでコレステロール生合成の律速酵素であるHMG-CoA還元酵素の全活性が増加したのでこの酵素タンパク質の量が増加したと判断される。また、この酵素の活性型も増加した。したがって、シスチン過剰食による血清コレステロールの増加は肝臓におけるコレステロールの合成が促進することに基づくことをはじめて示した。
|