研究概要 |
現在まで澱粉粒の分子構造(amylose,amylopectinの空間的配列)に関しての容認できる説は全く無いと云ってもよい。我々はこの問題解決に2つの方法を開発して取り組んだ。 第一は、澱粉粒のボールミル処理である。即ち、ボールミル処理が水も熱も加えることなく粒を糊化させることを見いだした。このことは,ミルの諸条件を変える事で極めて容易に糊化の程度を制御できることを意味する。従って、適切なボールミル条件を見いだせばamlopectinの結晶領域を部分融解させることができる筈であり、この結果、粒全体はその組織を保持したまま膨じゅんさせることが可能と考えられる。この粒にamyloseに特異的な試薬を作用させ反応させてからアミラーゼ処理するか、amylopectinに特異的な酵素を作用させることで、amyloseの固定化、または、削りだしが可能となることも考えられる。言わば鋳造におけるロストワッス法である。本研究においてボールミル処理が有効であることを確認した、そして超高圧処理による試薬の選択的導入のモデルとして脂肪酸導入に成功した。そして、脂肪酸がamyloseに特異的に導入されることを、澱粉の種類を変えることで証明した。これは、間接的にamyloseの独立性を示唆する。 第二は、アミラーゼをある特定の長さの鎖の先端に固定することで、酵素の作用範囲を制げんし、amylopectin分子を外側から順次分解させ、amyloseを露出させる。この場合もアミラーゼの作用を可能にするため当然ボールミル処理で粒組織を緩めておく必要がある。先ず、pullulanaseの磁性化単体への固定化を試み成功した。この固定化酵素により容易に個体の澱粉粒から酵素の分離が可能になった。次ぎの段階としてamylopectinの外部からの切断を検討し是れに成功した。以上の実験結果から、方法論的にはかなりの進展を見たといえるが、決定的結論を得るには至らなかった。
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