n-6系高度不飽和脂肪酸(PUFA)としてリノール酸、γ-リノレン酸およびアラキドン酸、n-3系PUFAとしてα-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)の生理作用を定量的に評価した。そのため、食餌脂肪は飽和/モノ不飽和/高度不飽和脂肪酸の比を一定とし、PUFAをリノール酸のみとした食事脂肪をコントロールとして、その一部を各種PUFAで置き換えることにより作製した。その結果、EPAは血漿および肝臓トリグリセリド濃度低下作用を、DHAはEPAの作用に加えて、血漿コレステロール濃度低下作用を発揮することが明らかとなった。EPAとDHAのトリグリセリド低下作用は肝臓での脂肪酸およびトリグリセリド合成の抑制に伴う肝臓から血中へのトリグリセリド放出の減少によると考えられた。また、DHA群では肝臓からのコレステロールの放出速度も低下した。血清、肝臓、大動脈、血小板、心臓のホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミン中のアラキドン酸含量はアラキドン酸の摂取で増加し、γ-リノレン酸摂取で増加の傾向にあった。n-3系PUFA摂取ではアラキドン酸含量は減少し、DHAが最も減少作用は強く、ついでEPA、α-リノレン酸の順であった。しかし、脳のリン脂質では食餌PUFAの影響はほとんど認められなかった。血小板のトロンボキサンA2産生量はn-6系PUFAに対して、α-リノレン酸>EPA>DHAの順に低下した。大動脈プロスタグランジンI2産生量はγ-リノレン酸およびアラキドン酸摂取により増加したが、n-3系PUFAでは変化しなかった。また、自然発症高血圧ラットでの収縮期血圧の上昇に対して、DHAは抑制的に作用した。このように各種PUFAの生理作用が明らかとなり、これら脂肪酸の有効利用のための重要な情報がえられた。
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