1.本研究の研究代表者はすでに動物細胞を用いたコロニー形成法により、カフェ酸エステルなど一定の構造的特徴を持った植物ポリフェノールが、過酸化水素(H_2O_2)の細胞毒性に対して抑制効果を示すことを見いだしている。本研究では、これらの機能性抗酸化物質がDNAレベルでも抑制効果を持つかどうかをアルカリ沈殿法によって検討した。すなわちチャイニーズハムスターV79細胞にH_2O_2を30分間作用させると、DNAの沈殿量がほぼ直線的に減少した。次にカフェ酸エチルエステル(GAFE)を予め細胞に取り込ませておいた状態で、H_2O_2を作用させた。するとCAEEはH_2O_2によって減少するはずのDNAの沈殿量を増加させた。これはCAEEがH_2O_2による細胞内DNA切断を抑制したことを示している。複数の植物ポリフェノールを用いてその抑制効果を検討してみると、細胞レベルとDNAレベルにおいて同じ構造活性相関が見られた。 2.タ-メリックの主成分であるクルクミンを化学的に変換し、tetrahydrocurcumin(THC)やο-dihydroxy構造を持つdihydroxycurcumin(DHC)、dihydroxytetrahydrocurcumin(DHTHC)を調整し、コロニー形成法を用いてH_2O_2毒性に対する抑制効果を調べた。その結果H_2O_2毒性に対してDHCとDHTHCのみが抑制効果を示し、ο-dihydroxy構造が必要なことを確認した。またクルクミンに比べてTHCの方が毒性効果が弱く、これは取り込み量を反映した結果であることを、リポソームを用いた実験系で明らかにした。 3.がん予防機能が注目されている茶カテキン類は、その酸化の過程でH_2O_2を生成する。スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)が、カテキンの酸化分解とH_2O_2生成をともに抑制することを発見し、スーパーオキシドがカテキンの酸化に関与していることを明らかにした。
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