研究課題/領域番号 |
06660165
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
有賀 豊彦 日本大学, 農獣医学部, 教授 (50096757)
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研究分担者 |
石井 謙二 日本大学, 農獣医学部, 教授 (80058776)
桜井 英敏 日本大学, 農獣医学部, 助教授 (80059617)
熊谷 日登美 日本大学, 農獣医学部, 講師 (20225220)
関 泰一郎 日本大学, 農獣医学部, 講師 (20187834)
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キーワード | ニンニク / メチルアリルトリスルフィド / 血小板 / プロスタグランジン / 血管内皮細胞 / アスピリン / シクロオキシゲナーゼ / トロンボキサンシンセターゼ |
研究概要 |
【目的】我々は、ニンニク精油に含まれるmethyl allyl trisulfide(MATS)が強力な血小板凝集阻害作用を示すことを認めるとともに、その作用機構について検討し、血小板内アラキドン酸(AA)代謝系-特にプロスタグランジン(PG)合成系の阻害を明らかにしている。しかし、PG合成系酵素に対する作用機序は不明であった。本研究では、MATSの作用部位を特定することを目的とし、MATSがPG合成に及ぼす影響を既知の阻害剤と対比することにより検討した。また、血管内皮細胞PGI_2産生におけるPG合成に対するMATSの影響についても併せて検討した。 【方法】家兎血液より調製した洗浄血小板を超音波破砕し、血小板破砕液とした。これを粗酵素液として、基質^<14>C-AAを加え、37℃5分間反応させ、生成代謝産物を分離定量してシクロオキシゲナーゼ活性を求めた。トロンボキサンシンセターゼ活性の測定は同様の粗酵素液に、基質として^<14>C-PGH_2を用いた。生成された放射性代謝産物はTLCで分離後、バイオイメージングアナライザーにより検出、定量した。これら代謝産物の生成に及ぼすMATSの影響については、OKY-046(トロンボキサンシンセターゼ特異的阻害剤)、アスピリン(シクロオキシゲナーゼ特異的阻害剤)、エスクレチン(リポキシゲナーゼ特異的阻害剤)のそれと対比し、MATSの作用点を推定した。PGI_2産生は培養牛大動脈内皮細胞の破砕液を用いて推定した。 【結果】本測定系により、アスピリンはシクロオキシゲナーゼ系代謝産物TXB_2産生を抑制し、リポキシゲナーゼ系代謝産物12-HETEの産生は増加させた。また、OKY-046はTXB_2産生を顕著に抑制し、12-HETE産生には影響を及ぼさないこと、エスクレチンは12-HETE産生のみを阻害することなどを確認した。そこで、MATSについて測定したところ、アスピリンよりも顕著にTXB_2産生を抑制し、また、12-HETE産生もエスクレチンより弱いが抑制した。すなわち、MATSは既知の阻害剤とは異なる性質をもつことが明かとなった。さらに、MATSによるTXB_2産生の抑制は、トロンボキサンシンセターゼ活性を阻害しなかったことから、シクロオキシゲナーゼ活性の阻害によることが強く示唆された。また、MATSは血管内皮細胞におけるPGI_2産生をアスピリンより強く抑制し、その抑制は、血小板におけるTXB_2産生に対する抑制よりも強力であった。 以前よりアスピリンは血小板凝集を抑制するが、強力な血小板凝集阻害作用を示すPGI_2の産生も抑制するという、いわゆる"アスピリンジレンマ"が問題とされてきたが、MATSはアスピリン以上にその傾向が強いことが示唆された。
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