β-カロチン系食品、色素の生産は当世の健康重視を示す象徴的パラメーターと云える。 本研究は機能性、特に、抗酸化性の強いβ-カロチンを微生物で生産させるために、平成6年度は菌選択を丹念に行った。現在までに、赤〜黄色酵母菌約1、000株を選択分離した。分離源としては、植物系材料が好都合で、樹液、腐食土壌に彩色酵母の分布が多い。彩色酵母菌の菌体から色素を抽出、(1)薄層クロマトでおおよそ色素分離を、(2)高速液体クロマトで色素分子種予測を行った。 (1)と(2)の結果から、存在が予測された色素の中にはβ-カロチン、カンタキサンチン、ゼアキサンチン、アスタキサンチンなど多数(10種以上)が認められたが、精製が充分でなく、絶対構造は未決定である。既知の抗酸化化合物の代表例がアスタキサンチンでありその生産菌はフアフイア属菌1種である。生産色素の殆どがアスタキサンチンである。しかし、分類学上同菌の生育最適温度は20°前後で、世代時間の長いことは、生産上の決定的欠点である。本研究で得られた、アスタキサンチン、カンタキサンチン、ゼアキサンチンなど、β-カロチン等を生産すると判断される株は、何れも30°付近に最適温度を持っている。 平成7年度は生産色素類の単離精製と化学構造決定を行うとともに、各分子種に対する特異生産菌の選定、分類および色素生産条件を決める。合わせて、変異株を用いて、培養経過におけるカロチン系分子種の経時変化から、カロチン代謝経路を推定する。
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