本研究は、年輪年代学の手法にアカエゾマツ・スギ・ヒノキを用いた、年輪幅の標準化に使われる関数を検討したものである。 年輪年代の推定に適した標準化の関数形には、年輪幅系列を3次多項式で標準化した後、5年以下の短周期成分を通過させるハイパスフィルタを併用した方法が推奨された。この標準化の方法で処理した年輪幅系列は短周期の変動成分のみを含む年輪幅系列が得られる。 この標準化法を用いた年輪幅変動の同時性について、同一円盤内の異なる方向や同一個体内の地上高の異なる円盤、異なる個体、異なる立地間の年輪幅変動を調べた。すなわち供試木を単木から地点へ、そして地域へ拡大しても、地域間に共通した年輪幅系列の変動の同時性が確認された。これら3樹種の年輪幅変動の同時性の範囲について、統計的な信頼限界にいたる距離を整理すると、アカエゾマツで約130km、ヒノキで約350km、スギで約200kmが算出された。 以上の結果から、得られた標準化関数を用いた手法は、各樹種とも広い地域に共通する年輪幅の同時性の知見が得られたことから、日本の年輪年代学を確立するための有望な手法であることが明らかになった。しかし、得られた統計的な信頼限界にいたる距離を年輪年代学の手法に応用する場合には、樹種により適用領域(距離)の違いを考慮しなければならないことも判明した。
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