研究概要 |
目的:ヒノキ漏脂症は九州から本州にまで広く分布し,病害の損傷は幹下部に集中して材として価値を無くしてしまう.樹脂成分化合物によるヒノキ漏脂症の進行度評定報の確立を目指し,取り組んだ. 研究成果:1 漏脂症ヒノキ樹脂から単離したテルペン 漏脂症患部の樹皮からヘキサン抽出および酢酸エチル抽出の大量の樹脂を得た.それらの量は非感染部樹皮の40倍と8倍にあたる.見かけ上変化の見出せない患部から数メートル上部の樹皮でも核抽出物が1.4倍と1.7倍と増えていた.5種のジテルペンがヘキサン抽出物から各種クロマグラフィーで分離され,機器データにより構造決定された.それらはManool (III, 8.9%), Torulosal (II, 2.6%), Torulosal (I, 1.3%), Communic acid (IV, 4.1%), Ferruginol (V, 5.7%)である.IV, Vはヒノキ球果の主要ジテルペンであるが,I, II, IIIは漏脂症ヒノキからははじめて見いだされた. 2 単離したジテルペンによる3種の有力病原菌の成育試験 直径5mmの菌体はPDA培地上のテルペン1mgを吸着したろ紙の中央に置かれ一定期間培養された.Controlと生育を比較した.Cryptosporiopsis abietinaではIVの添加で大きく生育し,III, II, Iの添加では生育が抑制さた.Sarea resinaeは添加の影響を受けていない.Cistella japonicaではIIとIは抑制している. 3 ヒノキ漏脂症進行度の評定報 漏脂症ヒノキからはじめて見いだされ,有力病原菌2種が生育抑制の影響を受けていることから,I, II, IIIは漏脂症に特徴的な化合物である.これらの樹皮含有量の増減から漏脂症の進行度を判断出来ると考える.極性のキャピラリーカラムを用いたGC分析から,非感染樹皮抽出化合物の熱分解によるピーク(X)の1本の強いピークだけなら非感染状態であり,Manool (III)などの4〜5本のピークが現れたら感染している状態と判断できる.
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