本年度はデータの入力を行うとともに、熱帯アジア地域の中でも最もデータの揃っていると考えられるフィリピンのデータを用いて分析を行った。具体的には1969年と1988年に行われたフィリピンの森林資源調査から計算した全国12地域の森林減少データを用い、関連すると思われる基本的な経済社会要因との関連について分析を行った。 熱帯林の減少には、1)焼畑移動耕作、2)農地の拡大、3)過度な放牧、4)木材の盗伐、5)多大な燃材採取、6)用材伐採、7)火災などの直接的な要因と1)人口増加、2)経済成長、そして3)制度(農地の所有制度や森林の国有制そして森林利用の慣習の変化)などの間接的な要因が絡みあっている。ここでは森林減少が人的要因によって起きることに注目し、得られたデータを一人当たりの数値に変換してこれらの分析を行った。まず、土地面積、農場面積、森林面積それに丸太生産が、森林減少面積と高い相関を持った。これは一人当たりでみて、森林面積と森林減少面積の間に高い相関があり、他の変数も森林面積と高い相関を持つためと判断される。 そこで変数間の関連を解きほぐすために多重回帰分析を行った。その結果によれば森林面積が多い地域、また非農林地の少ない地域で森林減少が大きいことが明らかとなった。具体的な森林減少に対する弾性値は森林面積がおよそ0.6、非農林面積がおよそ-0.6であった。その他に丸太生産の少ない地域ほど、またマニラからの距離の遠い地域ほど森林減少が多い傾向が認められた。
|