研究概要 |
天然林施業の現地を調査した.施業方法と収穫作業方法及び,蓄積などの林況を調査した.林況、作業方法の異なる森林を見いだし調査した.調査結果に基づいて,森林収穫モデル,収穫作業モデルを作製した.モデルを用いて,林況,作業方法の違いによって創成される林況の違いを検討した.現地調査によると,択伐率が小さい場合には,土場当りの集積材積を適切にしないと集材対象林地が大きくなって、長距離の集材作業による立木の損傷が大きくなり,きめ細かな森林資源の利用と林況の保全を目指した森林施業が,結果として森林を大きく撹乱する場合があることが把握された.すなはち,森林の持続的利用における施業では,森林の自律的な更新,保全能力と,立木資源の収穫量や収穫される立木の質,位置とを適切に妥協させることはもちろん,収穫作業における林況の撹乱程度を考慮した作業システムやその規模に関しても妥協させることが必要である.調査地においては,高密度に林道が開設整備されているところもあったが,森林資源利用の基盤としての林道も,資源利用作業における森林環境,状況への影響を抑えるように利用されることが必要であって,林道網の機能として,素材生産作業においていかなる作業システムが構築可能であるかということはもちろん,林況の保全のために適切な作業システムにおいて有効な林道網の密度(量)と配置(質)について検討する必要があると考えられた.森林の持続的な利用には,立木蓄積などの量的水準での評価のみならず,健全な森林の更新機能の維持という観点からの質的水準の高さを維持することが必要であり,資源利用技術としての択伐作業と利用基盤としての林道ならびに作業システムが,環境撹乱の許容量範囲内のおいて,森林の成長,更新を可能とするように協調実現されることが必要である.これらの数量的な把握とモデル化を継続して進める.
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