研究概要 |
平成6年度には、生産の対象としての「長野県木曽谷の天然檜林」,物見の対象としての「奈良県吉野山のサクラ」,リゾート地においての「長野県軽井沢の森林」についての調査研究をおこない、成果をまとめることができた。本研究によって、森林は単なる自然なのではなくて、地域住民の知恵の結晶としてつくり上げられたものであることを明らかにすることができるであろう。そして、平成6年度の調査研究によって、他の対象地についての調査研究方法についても検討することができた。それにしても、自然科学が発達していなかった時代においても、“科学的"ともいえる森林とのつき合いをおこなっていて、「文化としての森林」を成立させてきたことはすばらしいことなのである。 なお、山形県出羽三山,富山県砺破地方の屋敷林,島根県出雲地方の築地松,三重県伊勢神宮神域林などについては、調査を継続しているところであるが、まとめ方について現在検討中である。 平成7年度には、長野県伊那谷の里山,静岡県三保の松原,奈良県吉野地方のスギ林,京都府北山のスギ林,東京都奥多摩地方の水源林などを対象として新しい調査をおこなうことになる。そして、神の森林・死者の森林・物語の森林・物見の森林・生活の森林・生産の森林・リゾート地においての森林などの形で、日本文化としての森林についてまとめていく。 森林は多義的な存在なのであり、森林と人間との関係を明確にしていくためにも、森林の多義性を追求していかなければならないのである。
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