本研究の目的は海抜高の異なるブナ林におけるダイナニズムを表現するに、成長固定試験地のデータを時系列に解析すること。この場合に、生態・生理学的シミュレーションモデルの開発とその問題点を考慮することなどである。 (1)モデルの開発:先に東京大学大型コンピュータで動作したプログラムをパーソナルコンピュータで動作するよう、プログラムを改変しパソコン上で可能とした。具体的にギャップを中心に、光環境が大きく異なる林床レベルおよび林冠レベルで相対的な光強度を推定することが可能になった。 (2)写真の画像情報化:成長固定試験地における画像データ(たとえば樹冠の映像)を、市販のアプリケーションソフトを用いてモデルに導入できるかどうか検討したが、今回研究期間では時間の制約がありその実用性を評価するまでには到らなかった。今後継続して研究を続けることにした。 (3)成長固定試験地のデータ処理:8カ所の成長固定試験地において、毎木調査を行い25年目のデータを収集した。データは計算機システムに記録され、立体画像として記録された。固定試験地内のギャップにおいて、オオバクロモジ、ウリハダカエデ、ハウチワカエデなど初期成長速度の速い樹種に絞って成長解析を行った。その結果、これらの種の成長速度はブナのそれの数倍に及んだ。この原因として今後ギャップにおける光環境の把握と光合成速度のアダプテェーションについて研究を進める必要があることを確認した。
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