研究概要 |
昨年度までの予備調査と本年度の調査の結果、調査を行ったマツ林では合計5種の寄生蜂の生息が確認され、これらの寄生蜂の垂直分布構造には、寄生蜂の産卵可能な樹皮厚と寄生蜂の飛翔力の種間差が、局所分布には同じく寄生蜂の産卵管長に関連した樹皮厚および寄主密度が密接に関係していることが示唆された(内容の一部論文掲載、さらに論文準備中)。これをさらに詳細に検討するため、本年度も9〜10月に褐変したクロマツ、アカマツの試料木を伐倒し、そこでの寄主および寄生蜂の群集構造や寄生率、高さ別分布パターン等を引き続き解析中である(論文準備中)。 また、予備調査による、2種の寄生蜂、Atanycolus initiator,Spathius brevicaudisの寄主利用様式とサイズに依存した性比調節の違いについての知見と、次年度に行う予定の人為的操作による寄主と寄生蜂の接種・産卵実験により、Charnovのモデルの樹皮下穿孔虫寄生蜂への適用可能性についても検討していく予定である。これまでの一連の調査により、寄生蜂と寄主の種組織がほぼ明らかにされ、また特定時期の寄主・寄生蜂の垂直分布構造もある程度明らかにされたため、次年度は寄主群集の時空間的構造と寄生蜂の繁殖戦略の問題を本年度に引き続き詳細に検討し、後半には本研究のとりまとめを行う予定である。
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