研究概要 |
本研究の目的は,当研究室で開発した数値地形解析システム(DIGITAS)に基づく地形解析結果を活用して,森林環境の保全を大前提としつつ,対象区域で候補となりうる各種森林作業方法に対応した各々の林道網の配置を,樹枝状もしくは循環型のどちらについてでも,系統的に,迅速に探索する,新しい林道網計画手法を開発することであった。2年間の研究を通じて,未だプロトタイプながら,数値標高モデル(DEM)の格子点間を結ぶ概略の,循環型となる林道網の配置を,各路線の影響範囲(林道からの集材可能範囲)をできる限り広くすることを条件として,自動的に探索するアルゴリズムを,開発できた。また,DIGITASを用いて地形解析を行った結果を迅速に図示するための,パソコン用ソフト・プログラム・システムを開発した。この図示システムは,本研究の様々の過程できわめて有用であった。林道路線の通過予定地となる斜面の崩壊危険度を予測するための,斜面傾斜角と集水面積を用いた指標による従来からの方法の精度を高める目的で,DIGITASによる地形解析結果を踏まえて,山腹斜面の傾斜変換線の抽出を試みた。その抽出法を名古屋大学農学部附属演習林内に適用した結果,下部傾斜変換線付近に既往の崩壊地が多く存在していた。この結果は,上部変換線付近に多いとする従来の学説と異なる面があり,興味深い。しかし,この山腹斜面の崩壊危険度の予測を行う過程は,未だ検討を完了しておらず,したがって地形的に悪条件の場所を避ける措置について,路線探索プログラムに組み込めていない。なお,当初,実験計画に含めていた樹枝状林道網の開発については,時間的な制約のため,取り組めなかった。
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