本研究では、森林の経済的利用と環境保全的利用をどのように調整するかを研究課題とし、この課題解明のために森林成長モデル、林業経済モデル、および森林環境保全モデルを統合した「森林資源-林業生産-森林環境保全モデル」を構築し、政策シミュレーションを通じて、上記の森林利用に関する調整政策を提言する。そのため前年度は、森林成長モデル、林業経済モデル、森林環境保全モデルの構築を行ってきた。具体的には、森林の成長による森林蓄積の増加、木材伐採による森林蓄積の減少などを動学的に捉えたモデルを構築し、森林資源が人間の経済活動によってどのように変化するかを明らかにしようとした。また、木材の生産、流通、消費の過程を動学的に捉えるモデルの構築を行った。さらに、森林環境保全モデルを構築し、森林環境保全政策が森林資源に及ぼす影響を捉えようとした。 最終年度である本年度は、前年度までに個別に構築された三つのモデルを統合する「森林資源-林業生産-森林環境保全モデル」を構築し、統合モデルの安全性の検討を行ったうえで、このモデルを用いて、ある政策が採られとき、その影響が森林資源、林業経済、森林環境にどのような影響を及ぼすかを全体として捉えるシミュレーションを行った。 本年度までの研究の結果、森林のような超長期にわたる生産にかかわる対象をモデルに組込むためには、計量経済学モデルのような「システム・ブラックボックス型モデル」に基づく分析、予測よりも、システム・ダイナミックス・モデルのような「システム構造型モデル」に基づく分析、予測の方が適切であることが判明した。 今回構築したモデルはプロトタイプモデルであり、現実の政策決定に利用するためにはより精度の高いモデルを構築する必要がある。
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