戦後植林された広大な森林、これらの森林資源は蓄積で30億m^3を上回り、年間の成長量も1億m^3に近いものになっている。それは森林を拡大してきた「資源の改良過程」から間伐材や小径材を利用する「活資源化の第1段階」を経て、資源の「利活用段階」を迎えようとしている。しかし、林業・山村をめぐる状況は危機的であり、森林が国土を守り、水資源をかん養する機能を果たしていくことが難しくなることが危惧されている。 林野所有の不在村者が増えていることは深刻である。不在村者の林野の所有面積は2割を上回っている(90年)。これまでのように山村で暮らし、日常的に山に入り、山を見回るようなこともなくなった。たとえ、山村に暮らしていてもサラリーマン化し、山に行く機会も少なくなった。林業主業林家を対象とした『林業経営に関する担い手層の意向調査』(1993)によると、山林の管理が十分に実施しているというのは4割にとどまっている。この調査の対象林家は平均規模が100ha近い上層であるが、この上層ですらこのような状況である。また今後、林業経営に力を入れないというのが約2割になっている。そしてまた、林業の採算は悪化している。それは立木価格の推移が端的に物語っており、1980年に2万2700円であったズギ価格は、94年に1万2400円になり、4割を上回る低下である。この間、ヒノキも3割、マツは4割の下落であった。50年間手塩にかけたスギ山1ヘクタールを販売しても400万円にならない状況になっている。スギの造林投資の内部収益率は60年代に6%台であつたものが、92年には1%を下回るようになっている。こうした状況は先進地三重・飯南、後発地広島・三次の調査で詳細に解析した。
|