研究概要 |
地域の林野所有構造は零細である。個人有林にしても会社有林にしても圧倒的に5ha未満層である。しかし,今ここに大きな変化が起こっている。以前は林家と言えば農家でもあった。木材や薪炭生産のほか,タケノコ,椎茸,クリ,飯米生産など複合家族的経営の形を取っていた。この構造は急速に変わった。林家,必ずしも農家でない状況が現れている。つまり,サラリーマン林家の出現である。このことはまた過疎化と平行して進んでおり,他市町村在住者の林野所有を生じさせた。サラリーマン林家はもとより,零細な所有者が離村すると,山の管理の放棄につながる。今後,植林山をどう維持していくか,地域の大問題である。わが国の森林は,都市の水瓶でもある。森林の管理が十分でない状況は,森林の水源かん養機能の低下をもたらす由々しき事態でもある。 このような個々の林家の林業離れに対して,政策は森林組合の活動にその落ち込みの下支えを期待してきた。しかし,ここにも問題はある。組合事業の従事者の高齢化にともない労働力の低下は否定できない。それは効率性の低下に外ならない。いかにして若年労働力を確保するか,山間部町村では緊急課題である。そこで自治体主導による第三セクター方式による労働力確保対策が試みられている。若い農林業の担い手の確保と若者が定住することによって地域活力の向上を図ろうというねらいをもっているが,第三セクターは経営的には難しい状況で,町村からの支援によって何とか運営しているのが実情である。下流の市町村が上流域の森林の整備に財政的に支援する形もみられるが,その広がりにおいて極めて限られている。
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