北海道のアカエゾマツ林の下層において、異なった樹冠形を示すコシアブラ、ヤマウルシ、ミズナラが共存していたが、それぞれの種個体群の更新維持には樹冠形の違いが関連しており、森林下層で順調に更新するコシアブラは、明瞭な短枝と長枝を形成し、短枝率の高さと明瞭な主軸維持という特徴を備えていることを明らかにした。本年度は、コシアブラの樹高成長を再測し、また先の3種の過去4年間に渡る樹高成長量の変動率などを解析した。その結果、コシアブラは、長枝的樹高成長を示した翌年には殆どの個体が短枝的な樹高成長を示したことから、樹高成長に周期性が存在していることを示唆した。過去4年に渡る樹高成長量の変動率は、コシアブラがかなり大きい(140%)のに対して、ヤマウルシとミズナラは小さく(30〜40%)、コシアブラの年較差が大きいことを示していた。コシアブラが長枝的樹高成長を示してから、次の長枝的樹高成長を示すまでの年数を調べた結果、その頻度分布は2年をモードとする正規的なものとなったことから、アカエゾマツ林のコシアブラは3年を周期とする樹高成長を示していることが明らかになった。コシアブラのこうした結果は、モジュールレベルにおける多様な形態発達の存在を示唆するとともに、このレベルの解析によって既存の維持様式以外の更新維持様式が解明される可能性をも示唆していた。 一方、北方針広混交林の広葉樹林下と針葉樹林下のトドマツは、個体当たりの着葉量と樹高の間にロジスティック曲線が当てはまり、増加相と定常相が存在することを以前示したが、3年に渡るトドマツ若木当たりの当年枝数の推移を調べた結果、広葉樹林下の若木が著しい増加を示したのに対して、針葉樹林下の若木は経年的に一定化していたことから、モジュールレベルの解析から増加相と定常相の2相の存在が裏付けられた。
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