研究概要 |
本研究の目的はリモートセンシングである高感度放射温度計の表面温度の画像データと熱収支観測を組み合わせて蒸発散量を推定する方法により推定された蒸発散分布がどのような要因に起因するのかを土壌水分量,ヒートパルス速度(樹液流速度)を同時に測定し,それらとの関係を明らかにすることである.本年度の研究実績は以下のようであった. (1)実験観測は滋賀県伊香郡高月町のスギ林の斜面と愛媛県松山市の愛媛大学農学部附属演習林のヒノキ林の斜面において数日間実施した.まず熱収支観測は,高さ約16mのポールに通風型乾湿計,放射収支計,3杯型微風速計を設置して2高度の気温,湿度,3高度の風速,純放射量などを10秒間隔で計測した.ヒートパルス速度の測定は,熱収支観測地点付近の6本の樹木について約30分間隔で自動観測を行った.土壌水分量は読みとり式土壌水分計により観測日の午前,午後の2回読みとりを行った.また観測日の日中において約5分間隔で256^*207画素のデジタルデータとして表面温度の観測を行った. (2)解析結果は,熱収支観測のデータとヒートパルス速度の関係を調べると,従来から指摘されているように熱収支観測による蒸散量との時間的ずれが見られた.また気温,風速,純放射量,観測ポール付近の平均表面温度とは正の相関が見られ,またボ-エン比とは負の相関が見られた. (3)さらに演習林で測定された表面温度画像からヒートパルス速度を計測している樹木(ここでは4本のヒノキ)を特定してその樹冠と思われる範囲の表面温度とヒートパルス速度の関係を調べると,ヒートパルス速度の大きい樹木ほど表面温度が低く,表面温度法で得られる蒸散量は大きくなることが判明した.またこの時の土壌水分量は観測ポール付近では違いがないことがわかっている.このことから表面温度の低い樹木は温度の高い樹木より蒸散量が盛んであることが明らかになった.
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