本年度は風倒木災害の発生機構について地形的、土質力学的、キネマティックウェーブ法的観点から考察するとともに、さらに今後発生が懸念される土木流災害の予知、予測をおこなった。 まず実態分析の結果から、風倒木災害の発生形態には幹折れ、幹曲がり、根返りの3タイプがあることがわかった。そしてこの場合風倒木がいずれの発生形態をとるかは、風速変化の周期によって規定される。 宮崎県南郷村で発生した風倒木災害地の地形分析結果によれば、標高的には310m〜400m付近に集中することが明らかとなった。風圧模型実験の結果によれば、最大風圧は斜面の頂部よりやや下側の地点において発生し、風倒木災害におけるダウンバースト現象の存在が確認された。実際宮崎県南郷村でも、谷部の方が尾根部より10%ほど風倒木災害の発生率が高くなっているのは、このこととも大きく関係していると思われる。 一方土質力学的手法に基づいて、宮崎県南郷村のスギ造林地において台風13号時の風速37.9m/secに耐え得る根張り直径(これを理想根張り直径という)を計算した結果と、実際根返りを起こした樹木の根張り直径を比較すると、風倒木災害を起こしたスギの根張り直径は、理想根張り直径の20%程度にしか達せず、スギの拡大造林が森林の防災機能をかなり低下させていることがわかった。さらに風倒木の斜面崩壊実験の結果、風倒木によって土層撹乱が起こった場合の崩壊発生限界勾配は、正常斜面に比べて21.6%も減少していることがわかった。そしてこのときの風倒木斜面の危険度を表す深度係数および土層のもめ係数が土壌硬度、土の単位堆積重量、および透水係数の関数で表されることを明らかにした。
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