大分県日田地方および宮崎県南郷村で発生した風倒木災害地の地形要因の分析結果によれば、日田地方では標高300m〜700mの位置で根返り、200m〜400mの位置で幹折れの発生頻度が高く、これに対し南郷村では標高310m〜410mで根返りタイプの発生頻度が最も高くなっていることがわかった。さらにこれを斜面傾斜度からみた場合、日田地方において風倒木の発生率が最も高くなるのは勾配23°の斜面であり、非発生斜面との勾配差は約5°であった。また南郷村では谷部の方が尾根部よりも約10%ほど風倒木の発生率が高くなる傾向がみられた。こうした風倒木の発生形態は台風時の風の変動周期によって規定されるようで、南郷村で根返りが多かったことは、台風最盛期の突風の変動周期が0.2秒〜0.3秒よりも大きかったことを示唆している。また風圧測定模型実験結果によれば、最大風圧は斜面頂部から約10%ほど下がったところにおいて発生し、台風時にダウンバースト現象のおこる可能性の高いことが実証された。つぎに台風時の強風による土層のもめの影響について検討した結果、日田地方、南郷村ともほぼ地表から60cm〜70cmの深さで斜面不安定度係数は0となり、それ以下ではあまり風の影響は受けていないことがわかった。また正常斜面と風倒木斜面の透水係数を用いて、キネマティックウェーブ法により降雨開始から崩壊発生までの所要時間を求めると、南郷村では風倒木斜面は正常斜面に比べて10%〜20%ほど短くなることがわかった。一方降雨による土壌の飽和条件と土砂の流動発生勾配式から日田地方風倒木斜面の崩壊発生限界雨量を求めると15mm/hrとなり、こうしたところでは集中豪雨に限らず、通常の降雨でも土木流災害の発生する危険性がかなり高くなっていることが明らかとなった。
|