研究概要 |
1.芦生原生林(京都府北桑田郡美山町) (1)堆積物の採取と分析結果 今年度は,長治谷湿原(標高637m)において,堆積物を採取した。堆積物はシルト質泥炭であり,層厚は128cmであった。この堆積物の花粉分析などの結果,次のような約1,000年間の森林変遷と人為の影響が明らかになった。 約1,000年前:スギが最も優勢な森林,約800年前:森林火災が起こり始め,スギが現象,コナラ亜属が増加,約650年前:芦生の周辺部でアカマツが増加 詳細な年代については現在測定中である。また,平成8年度には,表層花粉と森林植生との関係を解明する予定である。 2.大台ケ原原生林(奈良県吉野郡上北山村) (1)森林植生と表層土壌中の花粉組成の関係 七つ池のブナ-ウラジロモミ林において120m×160mの固定プロットを作成し,この中の生育する樹木の樹種,胸高直径,位置を調査した。さらに,このプロット内の35地点の表層土壌中に含まれる花粉組成と周辺の森林植生との関係を調べた結果,表層花粉の花粉組成は,局地的な森林植生を反映していることが明らかになっった。また,スギやアカマツのように広域な植生を示す樹種があることも認められた。これらの成果と,堆積物の花粉分析の結果から以下のような,森林変遷と森林に対する攪乱が明らかになった。 (2)堆積物の採取と分析結果 昨年度に採取した堆積物の花粉分析などを行った結果,正木ケ原-牛石ケ原間では,約800年前に急激にヒノキが減少し,コナラ亜属の樹木が増加した。七つ池では,約1,300年前に,ヒノキ,コウヤマキが減少し,約300年前には,調査地点で,何らかの攪乱により林冠にギャップが形成され,ミズナラがギャップを埋めたことが明らかになった。 平成8年度には,さらにトウヒ林内において,調査を進め,大台ケ原全体を総合的に,森林の変遷や攪乱の原因について解明する計画である。
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