これまでの調査で、玉川大学構内林地(町田市)、玉川大学箱根演習林、同弟子屈演習林それぞれにおいて、林内土壌中にSteinernema属線虫の生息分布が確認された。この線虫については、これらの地において共通した特定の種の分布であることも明らかになった。7年度は本種を対象に、弟子屈演習林において、土壌中の生息実態、とくに寒冷条件下での生態の解明を目的として調査を行った。 前年度の調査で、本線虫が林内に広く分布することを示したが、その分布様式については一様な分布ではなく局所性のみられることを明らかにした。ハチノスツヅリガ幼虫を用いたトラップ法による線虫検出について、土壌中における生息線虫との量的関係の解析を行った。その結果、10頭から1万頭の範囲においても(土壌500g中の線虫密度)、線虫検出率に大きな差は見られなかった。この方法では定量的な線虫生息数の推定は困難であると判断された。一方、本線虫が宿主昆虫に対して積極的に探索活動を行うタイプの種であることが示唆された。 なお、トラップ法による線虫検出調査において、供試昆虫(ハチノツヅリガ幼虫、ヒラタハバチ潜土幼虫)に対する寄生菌の検出率が1994年度に比べて高く、演習林内土壌の寄生菌密度が高まっていることが推測された。 本線虫について、温度段階別の殺虫試験では、ハチノスツヅリガ幼虫に対して10℃でも強い殺虫効果を示した。また、10℃においても生活史の進行がみられ、感染態幼虫出現にまで至った。既知種との比較では、S.carpocapsae、S.feltiaeに比べより低温に適応した種であることが示された。 弟子屈演習林におけるヒラタハバチ被害に関連して、本線虫による密度制御機能の評価については、これまで得られた成果をもとに、今後検証していく方向が明らかになった。
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