1.アカマツクラフトパルプと様々なリグニンモデル化合物を用い、亜硝酸処理における脱リグニン機構を考察した。 (1)アカマツパルプを様々な温度で3時間、硝酸(添加率:4%)と亜硝酸塩(添加率:0.3%)で処理を行ったところ、90℃と100℃で脱リグニンが促進された。 (2)フェノール性モデル化合物は、非フェノール性モデル化合物と比較し、非常に速やかに分解された。ベラトリルグリセロール-β-グアイアシルエーテル(VG)のCα-Cβ結合が開裂し、ベラトルアルデヒド(Vd)を与えた。 (3)VGのα-エチルエーテル(VGE)は、α-エチルエーテルの酸加水分解によってVGを生成し、その後Cα-Cβ結合の開裂によりVdを与えた。 (4)ベラトリルグリセロール-β-シリンギルエーテル(VS)、およびVSのα-エチルエーテル(VSE)は、VG、およびVGEと同様に分解してVdを与えた。しかし、VSはVGよりも速やかに分解し、スレオ型VSはエリスロ型VSよりも速やかに分解した。 (5)デヒドロジイソオイゲノールのメチルエーテル(β-5型モデル)、およびイソオイゲノールのメチルエーテルも、Cα-Cβ開裂によってVdを与え、また後者は温室においても速やかに分解した。 (6)VSを重水を用いた硝酸で処理したところ、Cβに重水素が置換されたVSが得られ、Cα-Cβ不飽和結合の生成を経るCα-Cβ結合開裂の機構が示唆された。 2.現在、酸素漂白における炭水化物の解重合に及ぼす亜硝酸処理リグニンの作用等について解明している。
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