今年度はまず、粒状体物質の破壊のシミュレーション手法としてCundallによって開発された個別要素法を拡張し、この手法が木材に適用可能となるように、基本的プログラムを開発した。弾性定数ならびに粘性係数を方向によって変えることで異方性をもたせて、木材の変形破壊挙動をシミュレート出来るようにした。プログラムのチェックのために、単純な破壊形態として、亀裂を持ったダブルカンチレバ-ビーム型試験体の破壊シミュレーションを行ったところ、実際の現象を良くシミュレート可能なことが示された。 次に、計算に使用する弾性定数、粘性係数ならびに強度を実験によって求めた。改良個別要素法では放線方向のばね、ダッシュポットの定数だけではなく、接線方向の剪断に拘わる定数も必要となるため、異方性の主軸3方向の常数を、さまざまな形状の試験体を用いて測定した。粘性係数は振動実験から求めることができた。 必要な下準備が出来たところで、次に破壊プロセスの応用がある、木材切削のシミュレーションを試みた。2次元の縦切削および横切削のシミュレーションで、繊維に平行もしくは直交して刃物が進行するものとして、特定の要素に対して刃物の動きに相当する変位を与えて解析した。縦切削の場合は先割れの進展がシミュレート出来たが、横切削では先割れの進展は見られず、縦切削と横切削の相違をうまく表現できた。しかし残念ながら、両者で異なる切り屑の形成をシミュレートするところまでは今年度は至らなかった。
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