本年度は、昨年度開発した木材用の改良個別要素法を用いて、木材の破壊現象のうち、木材切削に関わるものを中心に、その切削過程のシミュレーションを行い、同時に実験結果と比較検討をした。検討対象として、一つは、繊維に平行もしくは直行して刃物が進行する際に形成される切り屑に違いが現れる。2次元の縦切削および横切削のシミュレーションを行った。縦切削の場合、先割れ進展のシミュレートはうまくいくが、横切削のカ-ル状の切り屑生成は、数値解析上、プログラムが発散しやすいと言う欠点を内包しているため、残念ながら、大変形を十分にシミュレートできるところまでは至っていない。二つ目の検討対象として、高速切削と低速切削での切断面の平滑度の違いを本法でシミュレートした。カンチレバ-型のモデル試験体を用いた実験の結果との比較で検討したが、満足のいくシミュレート結果を得られた。また、プログラムに対しても若干の改良を加えた。要素間の変位量から主応力を計算するルーチンを作り、試験体内の応力分布を求められるようにした。これにより、有限要素法のような応力解析も可能なことを示すことができた。また、要素バネにかかる力を解析することにより、破壊形状の定性的シミュレートのみならず、切削力をある程度シミュレートできることもわかった。 最後に、本研究の成果は第12回国際木材切削シンポジウム(1995年10月、京都)において公表したが、大きな反響が得られたことを報告しておく。
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