天然セルロースのリン酸処理により、単分散性の平均重合度15の結晶性低分子セルロース(G15)ならびに平均重合度7の可溶性セロオリゴ糖(G7)を調製し、これらをセルラーゼ活性の測定に用いるセルロース基質とした。G15にセルラーゼを作用させると基質の急速な可溶化が認められ、この過程を経時的に分光光度計を用いて濁度の変化として求めることができた。一方、G15とセロビオース脱水素酵素ならびに電子受容体としてフェリシアナイドを混合した反応液を調製し、これにセルラーゼを加えるとその作用による可溶性セロオリゴ糖の生成にともなうフェリシアナイドの還元が吸光度の変化として観測された。さらに、この過程は本年度の設備備品費により自作した酸化還元電位測定装置を用いることにより、経時的に、しかも鋭敏に検出することを可能になった。以上のことから、セルラーゼによる結晶構造の崩壊をともなうセルロースの可溶化過程とセルラーゼによる可溶性セロオリゴ糖の生成過程を同一の基質を用いて、しかも同一条件下で観測することが可能になった。また、酸化還元電位測定装置を用いる方法は、G15以外のセルロース基質、たとえばアモルファス再生セルロースやバロニアやホヤ由来の高結晶セルロースに対しても有効であり、この方法を用いて種々のセルラーゼの基質特異性を調べることが出来ることを明らかにした。 これとは別に、可溶性セロオリゴ糖(G7)の還元末端をあらかじめ水素化ホウ素ナトリウムでアルデトールに変換しておいた基質ならびにセロビオース脱水素酵素とチトクロムcを電子受容体として混合した反応液を用いることにより、セルラーゼ活性を簡便に、しかも高感度で経時的に観測する手法を確立した。
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