1.紙の厚さ方向に対する電子線の加速電圧の影響を調べるため、坪量40g/m^2の填料無配合の市販上質紙20枚重ねて、150-300keVの電子線を50kGy照射して、各紙葉の耐折強さを測定した。坪量を横軸にとって測定値をプロットしたところ、いずれの加速電圧の場合とも線量計を用いて得られる深さ-線量曲線裏返しにしたような結果が得られ、150keVの電子線で200g/m^2程度、300keVの電子線で700G/m^2程度まで紙の強度特性に影響が及ぶことがわかった。 2.50-200g/m^2の範囲で坪量を5段階に変えた手抄き紙を作製し、150-250keVの電子線を50kGy照射して、耐折強さを測定した。150keVの電子線照射では照射しない対照とほとんど変わらないが、250keVになると、特に150g/m^2の高坪量試料の強度の低下が大きいことがわかった。 3.紙を構成する繊維より高比重の填料による電子線の吸収を確かめるため、填料配合量が5、22%と大幅に異なる市販上質紙を選び、150-250keVの電子線を50kGy照射して、耐折強さを測定した。しかし、この程度では、填料配合量の影響はわからなかった。 4.紙の表面に塗工してある無機顔料(填料と同質の物質)による電子線の吸収を確かめるため、塗工量が26、31、39g/m^2の市販コート紙を選び、150-250keVの電子線を50kGy照射して、耐折強さを測定した。200keVの電子線照射で、塗工量の多いほど強度低下が若干少ないことを認めた程度であった。
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