紙および紙・ポリマ複合シートに150-300kVの電子線を紙面に対して直角の方向から照射して、つぎに示す諸結果を得た。 1.紙層への電子線の吸収は、表面から少し入ったところで最大になり、それより深部では減衰して、150kVの電子線で200g/m^2、300kVの電子線で700g/m^2まで紙の強度特性(耐折強さ)に影響が及び、その影響の度合が線量計で得られる深部一線量分布曲線に一致することがわかった。 2.坪量を変えて作製した手抄き紙試料ならびに坪量が異なる白板紙試料に150-250kVの電子線を照射し、電子線の加速電圧が低いほどまた試料の坪量が高いほど、強度特性に及ぼす影響が小さく、深部一線量分布曲線からの予測どおりの結果を得た。 3.かなりの量の白色顔料を填料として配合、または塗工した市販紙の電子線照射において、顔料の存在の影響を追究したところ、塗工紙の場合に電子線照射の影響が若干少ない傾向にあった。 4.一定の原紙に厚さを変えてポリエチレンをラミネートした複合シートに電子線を照射したところ、加速電圧が低いほど、またラミネート層が厚いほど強度特性に及ぼす影響が小さく、ポリエチレン層による電子線の遮蔽効果が認められた。 5.市販の上級紙、アート紙、紙・ポリエチレン複合シートにEB樹脂を塗工してから電子線照射を行ったところ、耐折強さが低下するものの、引張り強さと破裂強さが向上することがわかった。これは、樹脂層の効果と考えられる。
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