既知の代表的な白色腐朽菌であるPhanerochaete chrysosporiumおよびカワラタケを用いてパルプ濃度20%の固体培養条件下で広葉樹末晒クラフトパルプを処理してバイオブリーチング(高濃度処理)を行った。その結果、窒素源を制限した条件下でパルプ白色度が著しく向上し、2および3日間の処理で14および22ポイントの白色度上昇が認められた。また、白色度上昇にともないカッパー価が低下したことから、パルプ白色化はリグニン分解によるものであることが確認された。そのさい産生される酸化系酵素(Mn依存性ペルオキシダーゼ(MnP)、リグニナーゼ(Lip)、ラッカーゼ)の累積酵素活性と白色度上昇との関係を検討した結果、P.chrysosporiumにおいてはMnPおよびLipの累積活性と白色度上昇との間に、またカワラタケにおいてはMnP累積活性と白色度上昇との間に相関が認められ、両菌株に共通するMnPがパルプ白色化(リグニン分解)に関与するキ-エンザイムであることが明らかとなった。なお、パルプ濃度1%でバイオブリーチング(低濃度処理)を行った場合にも高濃度処理に匹敵するMnPが産生されていたが、白色度は僅か数ポイントしか向上しなかった。低濃度処理においては、産生されたMnPや過酸化水素が培養液に移行して希釈されているものと考えられ、パルプ白色化には酵素や過酸化水素がパルプ繊維と高濃度で接触することが重要と判断された。 なお、還元系酵素とパルプ白色化(リグニン分解)との関連についても検討したが、パルプ白色度上昇と累計酵素活性との間に相関は認められず、セルロース分解との関与が示唆された。
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