研究概要 |
既知の代表的な白色腐朽菌であるPhanerochaete Chrysosporiumとカワラタケを用いてパルプ濃度20%で広葉樹末晒クラフトパルプ(LUKP)のバイオブリーチング(高濃度処理)を行い、そのさい産生される酸化系酵素(MnP)、リグニナーゼ、ラッカーゼ)の累積酵素活性と白色度上昇(脱リグニン)との関係を検討した。その結果、両菌株処理とも累積MnP活性と白色度上昇との間に相関が認められ、MnPがパルプ白色化に関与するキ-エンザイムであることが明らかとなった。 なお、還元系酵素とリグニン分解との関係についても検討したが、両者の間に相関は認められず、セルロース分解への関与が示唆された。 次に、P.chrysosporiumの産生するMnPを部分精製し、本酵素を用いてバイオブリーチングを試みた。12時間のMnP処理を3回繰り返すと、LUKPでは60.6%,針葉樹末晒クラフト(NUKP)で通常蒸解度のNUKP・Nでは67.6%,LUKPと同程度のカッパー価を有するNUKP・Lでは71.4%の脱リグニンが認められた。さらに、MnP処理したパルプにC/D-E-D漂白を後続させた結果、全晒パルプを得るに必要な全有効塩素量は従来の塩素系多段漂白法(C/D-E-D-E-D)に比べ、それぞれ、69.0,51.0および66.2%低減した。よって、MnPによるバイオブリーチングは塩素系漂白剤の低減に有効であり、環境保全型の漂白法であることが実証された。
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