材料中を伝播する弾性波の振動エネルギの大きさと方向を求める振動インテンシティ法と空気中を伝播する音波のエネルギの大きさと方向を求める音響インテンシティ法の両解析手法によって、木材のヤング率、密度、繊維走行、節・割れなどの欠点の材質評価のための非破壊検査が可能かを追求することを目的とし、本年度は、音響インテンシティ法に比べ、測定・解析手法が開発段階にある振動インテンシティ法を確立するための基礎実験を行った。 供試木材にはヘムロック気乾材で厚さ10mm、160×160mmの柾目板を用いた。1辺固定・多辺自由に支持し、試料中央部の1点を加振器により100Hzで断続的にバースト加振した。2個の加速度ピックアップを隣接させて試料に取り付け、FFTスペクトルアナライザを用い振動インテンシティに関わる振動加速度の虚数クロススペクトルImを求めた。その際、位相クロススペクトルが0でないことにより振動インテンシティの信頼性を判定した。1つの測定点において2個の加速度ピックアップの試料に対する測定角度θを10°刻みで360°回転させ、試料面35カ所で多点測定した。 その結果、試料の固有振動モードの振動数についてθとImの関係をみると明瞭な8の字型により、振動エネルギの流れ方向でImは最大となり振動インテンシティ(ベクトル量)が求められた。全測定点のImよりベクトル線図を作図すると、加振点から振動エネルギの流れの様子が可視化でき、材質評価の指標になるものと考えられた。
|