モード解析および振動・インテンシティ解析による固有モード形と振動・音響エネルギー流れの形態から木材の材質評価の可能性を検討した。以下の結果を得た。(1)木材試験の節の有無により、固有モード形は大きく変化した。節部およびその近傍は密度が高く、ヤング率が高いために、材全体でみると材質的にかなり不均質となって固有モード形の振動の節、腹はかなりアンバランスになった。(2)振動エネルギーは打撃位置から周辺に向かって反時計方向に回転しながら伝播した。打撃位置が試料の中央の場合では、加振力が材に対して点対称であり、低次のモードでは振動エネルギーは反時計方向にきれいに渦を巻き、振動の節に対し直交するように振動エネルギの流れが現れた。一方、振動の節線が多く現れる高次のモードでは、振動の腹部で振動インテンシティが大きくあらわれ発散あるいは収束するような形態をとった。このように、振動エネルギーの流れは固有モード形に対応しており、振動エネルギーの発生・伝播・消費の様子を現している。木質材料の合板では、振動インテンシティ解析は材質評価の可能性があることを示唆している。(3)音響インテンシティのコンタ図は振動モードによく対応しているため木材が不均質であることを評価できる。音響エネルギーの平板表面からの放射パターンは、振動の腹部分から上向きに放射され振動の節に対し直交し外側に音響エネルギーが流れる。また、放射面積が狭い場合振動の節に対し隣接する放射面積の広い部分から音響エネルギが流れ込むことがわかった。これより、楽器の響板の放射効率、指向性などの音響特性を音響インテンシティ法により評価できるものと推察された。
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