研究概要 |
機械パルプの光による色戻り(光退色)を抑制するため、次の1)〜4)について検討した。 1)機械パルプの光退色抑制菌の細胞融合による高い色戻り抑制能を持つ菌の作出:2種の機械パルプの光退色抑制能を有する菌,Phanerochaete chrysosporium,Fusarium solaniからプロトプラストを調製し、PEG法によりこれらの細胞融合を行い、2種の融合菌(I,II)を得た。作出した融合菌I,IIの機械パルプの光退色抑制は新株よりも高く、融合菌Iは機械パルプの光退色をほぼ完全に抑制すること、また融合菌IIはその光退色を70%抑制することを見いだした。 2)高い機械パルプの光退色抑制能を有する菌のスクリーニング:機械パルプの光退色は、パルプ中のキノン還元とそれに続く新生したフェノール性水酸基のメチル化により抑制されることと考えられたので、インドフェノール、メトキシ-p-キノンを用いて、天然から光退色抑制能を有する菌のスクリーニングを行った。一次スクリーニングとして、色素を還元できる菌を選抜し、次いで二次スクリーニングとして、メトキシ-p-キノンを還元する菌を選抜し、2種の糸状菌を単離した。これらの菌は、機械パルプの光退色を各々47,42%抑制できることを明かにした。 3)機械パルプの光退色抑制に寄与する酵素の単離:光退色抑制能を有する一種の菌の培養液から、硫安塩析により菌体外粗酵素液を調製し、これをイオン交換クロマトにかけ、4つのフラクションに分画した。各々のフラクションの光退色抑制能は、各々30〜40%であり、4つのフラクションに活性が分散した。これから光退色抑制に寄与する酵素は、単独の酵素ではなく、複数の酵素が光退色抑制に関与しているものと考え検討中である。 4)モデル化合物の合成:菌体外粗酵素による機械パルプの光退色抑制の機構を更に解明するため、α-カルボニル基とコニフェリルアルデヒド基を有するリグニンモデルダイマーを新規な方法で合成中である。
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