研究概要 |
機械パルプの光による色戻り(光退色)を抑制するため、1)〜4)について検討した。 1)高い機械パルプの光退色抑制能を有する菌のスクリーニング:還元性色素を用いるスクリーニング法を開発し、この方法により4種の糸状菌(801,1304,501,1701)を単離した。これらの菌は、機械パルプの光退色を各々40,42,47,56%抑制できることを明らかにした。 2)機械パルプの光退色抑制菌の細胞融合による高い色戻り抑制能を持つ菌の作出:Fusarium solaniとPhanerochaete chrysosporiumの細胞融合(PEG法)により、2種の融合菌(1,2)を作出した。融合菌のアイソザイム分析(エステラーゼ,ペルオキシダーゼ)により、融合菌は両親株からの融合菌であることを確認した。融合菌1,2は機械パルプの光退色を各々100,81%抑制した。各々の融合菌は3代継代まではその高い抑制能を保持していたが、4代継代後は急激にその能力が低下した。また、P.chrysosporium×Stereum roseumの細胞融合により融合菌を作出したが、その光退色抑制能は親株のそれらよりも高くなかった。 3)機械パルプの光退色抑制に寄与する酵素の単離:光退色抑制菌,Trametes serialisの培養ろ液から硫安塩析(0.9飽和)により調製した菌体外粗酵素をイオン交換クロマトグラフィーにかけ、4つのフラクション(Fr.1〜Fr.4)に分画した。各々のフラクションの光退色抑制能は各々60,43,35,54%であった。Fr.1〜Fr.4により処理したパルプの差反射率の測定から、Fr.1にはキノンを還元する酵素が、Fr.4にはフェノール性水酸基をメチル化する酵素が含まれていることが判明した。Fr.1,4については細分画中である。 4)モデル化合物の合成:光退色に寄与する3種の官能基のうち2種を有するモデル化合物の合成を行った。合成の全ての段階(8ステップ)で無水条件を用いず、温和な反応条件でのルートを考え検討した。4ステップまで収率よく合成できた。目的物の合成は検討中である。
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