研究概要 |
酵素処理による機械パルプの光による色戻り(光退色)抑制について研究し、以下の結果を得た。1.機械パルプの光退色抑制菌のスクリーニング:2種の還元性色素を用いて、天然から機械パルプの光退色抑制菌をスクリーニングする方法を開発した。天然から4種の糸状菌(801,1304,501,1701)を単離した。その中でも1701菌は機械パルプの光退色を56%抑制した。2.細胞融合による機械パルプの光退色抑制菌の作出:光退色抑制能を持つ2種の菌,Fusarium solaniとPhanerochaete chrysosporiumからプロトプラストを作成し、これのPEG法による細胞融合により、2種の融合菌(1,2)を作出した。融合菌1,2はアイソザイム分析により両親株の融合菌であることを確認した。融合菌1,2は機械パルプの光退色を各々100,81%抑制した。その抑制能は両親株のそれよりも高かった。融合菌は3代継代まではその高い抑制能が保持されたが、4代継代後はその抑制能は大幅に低下した。3.機械パルプの光退色抑制に寄与する酵素の分離・分画:光退色抑制菌,Trametes serialisから菌体外粗酵素を調製し、これをイオン交換クロマトグラフィーにかけ、4つのフラクション(Fr.1〜Pr.4)に分画した。各々のフラクションの光退色抑制能は各々60,43,35,54%であった。光退色抑制に関与する酵素は単一の酵素でなく、少なくともキノンを還元する酵素と生成したフェノール性水酸基を保護する酵素が関与しているものと考えられた。4.光退色に寄与する官能基を有するモデル化合物の合成:光退色に寄与する官能基2種を有するグワイヤシルゲリセリル-α-ケト-β-0-4-コニフェリルアルデヒドエーテルをアセトグワヤコンベンジルエーテルから8ステップで合成することを試みた。4ステップまで収率よく合成できた。目的物の合成については現在検討中である。
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