研究概要 |
バクテリアセルロースの生産性の改善に関与する成分として我が研究室が発見したリグニンスルホン酸は、通常のHestrin-Schramm標準培地に添加するだけで大幅なセルロース収量の改善を達成することができる。この発見は、これまで報告されているミクロフィブリル形成阻害剤(CMC、Calcoflour,Congo Redなど)やメチルキサンチン類(Caffeine、Tyophylineなど)と比較しても格段に高い収量であることから非常に注目されている。 平成6年度には、上記の成果をAcetobacter Xylinum ATCC 10245株のみについて検討したものであることから、その普遍性について検討を行なうことにした。すなわち、セルロース合成能力を有することのわかっている6種の菌株、A.Xylimum IF0 13693、13772、13773、14815、14822、15237を用いてリグニンスルホン酸の添加によるセルロース収量の増加量を測定すると、ATCC 10245と比較して、その増加量は低いものも見られるが、全ての菌株で収量増加が確認された。すなわち、リグニンスルホン酸のバクテリアセルロース生産性の改善効果はかなりの普遍性を有していることが明らかになった。このように、菌株によってその効果に違いがあることから、今後さらにリグニンスルホン酸添加培地の収量をあたえるような菌株のスクリーニングが重要であることが示唆された。これまでの研究では炭素源をグリコールに限っているので、今後はさらに各種の炭素源、例えば、グリセロール、イノシトール、乳酸などの炭素源を用いて炭素源の違いによるリグニンスルホン酸の効果の違い、リグニンスルホン酸以外のリグニンの添加効果などについても検討する必要があることが分かった。
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