平成8年度は、北大西洋のニューファウンドランド、南大西洋のナミビア、沖縄舟状海盆、東京湾などから大量の標本を入手した。オーストラリアからはオーストラリア博物館、ビクトリア博物館などから標本を借用した。また、標本採集と情報収集のために魚市場の水揚げ魚類の調査を行った。神奈川県の調査では、ヘラザメ属魚類の採集が極めて有望な海域を見つけ、本研究および将来の研究に益する情報を入手した。 平成8年度は現在までに入手、借用した標本類を総合的に検討し、本研究で用いた標本は以前から考えられていた属内の3群のいずれかに属し、使用された全標本に基づいてこれら3群の存在が確認された。この3群の分類学上の取り扱いについては、トラザメ科全体の系統関係が明らかにされ、現在のヘラザメ属の分類学的取り扱いが検討された後に決定されるべきであり、分類学的なランキングに関しては将来の検討課題とした。本研究では、とりあえずこれらの3群の分類学的定義づけを行い、全種の3群への帰属を明らかにした。ヘラザメ属内の種に関しては、現在記載され、別種と考えられていた32種のうち31種が独立種として認められた。この中には分類学的に非常に近い関係で、シノニム関係が考えられるいくつかの種もあるが、結論に至ることが出来なかった。この31種以外に、特に南半球からは多くの未記載種が発見され、分類学的な情報が整理され次第公的出版物に逐次公表する。
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