(1)グルゲア胞子のアユへの経口投与による感染実験系の確立 地下水(19℃)を用いてアユを飼育し、アユに胞子を経口投与することによって、グルゲア症病魚を作出した。投与後の寄生体の発育を経時的に組織学的に調べ、感染成立直後の定着期が投与10〜20日後、定着後の増員生殖期が20〜28日後、胞子形成期が25〜52日後と、発育期を3期に分けた。このように、各発育期の日数にかなりの幅があったため、各発育期ごとの温度感受性を検討する予定であったが、発育状態を投与後の日数で表現することとした。 (2)高水温によるグルゲア発育抑制効果 1)処理温度:24℃では、むしろグルゲア症の発症を促進した。26℃では、シスト形成に影響が現れ始め、28℃以上では、明らかにシスト形成の抑制が認められた。これらの結果をふまえ、以降の実験における処理温度は29℃とした。 2)加温処理の期間:投与後、11日目(寄生体の定着期)と22日目(増員生殖期)から1〜16日の範囲で加温処理を行った。その結果、11日目からの温度処理区での効果はあまりなかったが、22日目からでは、どの範囲でもある程度有効であったので、処理期間は以降、5日間とした。 3)加温処理の時期:投与後、12日目から32日目にかけて5日間の加温処理を行った結果、22日目からの群が最も発症率が低かったが、発症を完全には抑えることは出来なかった(無処理群と比較した、相対感染率19%)。そこで、11日から26日後までの間に第1回、1週間後に2回目の高温処理を各5日間行ったところ、発症を完全に抑制することが出来た(対照魚の発症率:84.2%)。以上のように、発症を完全に抑制するには、2回の温度処理が必要であったが、抑止法はほぼ確立できたと考える。
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