(1)アユへの経口投与後のグルゲア胞子の取り込み:微胞子虫の胞子を特異的に染色する蛍光色素Uvitex2Bを用いて、魚を固定して常法により組織切片を作製し、アユ体内に経口的に入った胞子をUvitex 2Bで染色してからヘマトキシリン・エオシンで対照染色を施し、蛍光顕微鏡で観察した。その結果、8時間後から腸管内腔からの胞子の取り込みが観察された。 (2)抗体価測定法の確立:アユの血清を塩析、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィーにかけて、アユの免疫グロブリンを精製した。これをウサギに注射して得た抗アユlgMウサギlgGを1次抗体、HRP標識抗ウサギlgGヤギlgGを2次抗体として用いた。そして96 well plateに吸着した胞子を抗原とし、TMBを基質とするELISA法を確立し、アユのグルゲアに対する抗体価を測定した。 (3)寄生体の感染ステージと抗体産生との関連:感染歴のない人工感染魚では10日後から抗体産生が確認された。したがって、人工感染では、感染成立の有無にかかわらず、経口投与直後に取り込まれた胞子に対して直ちに抗体が産生されると考えられた。一方、自然感染魚群では、抗体価にばらつきが大きく、価の経時的変化は認められなかった。 (4)高温処理感染魚における免疫獲得の確認:感染歴のないアユを用いて人工感染を施し、高温処理魚を行ったところ、不処理魚との間に抗体価の差はなかった。その後、これらの魚に攻撃実験を行い、高温処理による免疫獲得を確認する予定であったが、事故により実験魚を失う結果となってしまった。その代りとして、実験開始時に感染率30%を示した自然感染魚群を用いて高温処理後、胞子の経口投与による攻撃試験を行った。その結果、抗体価の上昇はみられたが、高温処理によって免疫を獲得したという証拠は得られなかった。したがって、高水温処理はグルゲア症の治療に有効であったが、処理によって免疫は獲得されないものと思われる。
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