研究概要 |
1.使用採集具,曳網方法の決定 (1)1994年9月までの予備調査から,1辺2mの正三角形をした網口をもつ三角形中層稚魚網で約10分間傾斜水平曳を行えば,湾内および沿岸浅海域に生息する魚卵・仔稚魚を効果的に採集できることが明らかになった. (2)網地は約0.35mmの目合であれば,魚卵や前屈曲期仔魚は充分に採集できるが,後屈曲期以降の仔稚魚は極端に減少した.これに対して,約0.9mmの目合では魚卵は大型のものしか採集できないが,仔稚魚は比較的大型の後屈曲期以降のものまで採集できた.このようなことから,魚卵および卵黄嚢期仔魚の採集には0.35mm目合の,前屈曲期以降の仔稚魚の採集には0.9mm目合の稚魚網を用いるのが効果的で,広く魚卵仔稚魚相を把握するためには,両方の稚魚網を使用しなければならないことが明らかになった. 2.魚卵・仔稚魚群集の時空間的変化 (1)現在までの本調査および予備調査の結果から,湾奥,湾中央部,湾口の3定点とも夏から初秋にかけて魚卵仔稚魚の種類数,固体数が多く,冬から早春にかけて著しく減少し,明瞭な季節的変化を示した. (2)魚卵は種類数,固体数とも湾口で多く,湾奥で最も少なかった.仔稚魚の種類数は湾口で最大,湾奥で最少であったが,個体数は逆に湾奥で最大であった. (3)魚卵仔稚魚の多様性はほぼ周年湾口で高く,湾奥で低かった.また,各定点の群集間の類似性は湾奥と湾中央部で高く,湾口と他の2定点間では低かった.隣接する2ケ月間の類似度の変化から,秋と春に類似度が著しく低下し,この時期に群集の大きな交代があるものと考えられた.
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