研究概要 |
最適な効果的な種苗放流効果法を検討し計画するために,一般的には放流実験が推進されてきた。正攻法の進め方であるが実験計画のむずかしさや,同一条件で実験できないため要因選択の困難さが伴う。最近では視点を変えたやり方として,シミユレーション法も適用されつつある。 種苗放流は少ない情報や不正確なデータのもとで,より多くの収益(少ない損失)を得るように最適な行動(放流計画)を決定しなければならない。ここでは,不確実な対象(目的,目標)に情報を入れ,これを推定しながら,次の行動を決定するという考え方を明示する(条件付確率を基としたベイズ決定方式という)。情報と意思との調和のもとで,放流という意思決定がなされ,決定のタイムリミットや情報を得る調査の費用との関連も数量的に表示できる。 具体的な例として,長崎県平戸島の志々伎湾のマダイと遊漁の価値も高い淡水魚のアユをとり挙げる。放流計画は種苗の数・大きさ,放流時期・場所などの検討課題があるが,ここでは環境収容力が存在するとの前提下で,天然魚の資源量と放流種苗の数(数量的対応問題)のみ検討対象とした。 事前情報は前年秋〜初春の産卵親量,産卵数,流下仔魚,追加情報I(データ,過去の知見)は春の稚魚数や遡上期の数,追加情報IIは初夏の着底期や解禁日前の生息数とした。天然魚資源量の状態と放流種苗数という行動の関数である効用関数(効用とは金額の望ましさの程度を示す値,損失関数を使うこともある)の作成,最適放流計画に関した事前情報の効果(価値,影響),追加情報の価値,追加情報IからIIへの情報更新などについて具体例と対応しながら精査した。
|