研究概要 |
高知県四万十川河口域において,1994年から1995年にかけて,8月(夏季)・11月(秋季)・2月(冬季)の3回,稚仔魚の分布調査を行った.これと比較するために,1994年から月1回,河口域外でシラス(イワシ類仔魚)漁から漁獲物の一部を提供してもらった.これらを使用して本年度は以下のようなことが明らかとなった. (1)稚仔魚の種組成は,河口域と海域シラス漁場のものとは,一部は共通していたものの,基本的には全く異なったいた. (2)共通種の中で,アユの体長組成は河口域とシラス漁場の間では殆ど変わらなかった.これは海域に出ずに,河口域内で幼期を過ごし,そのまま河川を遡上する個体群が存在することを示す. (3)河口域内では,アユ・ハゼ科仔魚の鉛直分布は日周的に変化し,河口内に滞在できるように,潮汐リズムとうまく対応していた. (4)河口域内を成育場とする魚種はクロダイ・ヘダイ・クロサギなどの海産沿岸魚,アカメ・コノシロ・シマイサキ・スズキなどの汽水魚およびウナギ・アユ・カマキリ・ハゼ類などの両側回遊魚で構成されていた. (5)河口域内に進入して来る発育段階は魚種によって異なり,海産魚では上屈後仔魚期,汽水魚では上屈中仔魚期,両側回遊魚では稚魚期であった. (6)淡水適応に関係するプロラクチンを組織学的にアユ仔魚でみると,同サイズでも,上流の低塩分の水域程,プロラクチンは多く産出されていた.またアユは他の魚種に比べて,より早い段階で淡水に適応できることが示唆された.
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