研究概要 |
養殖イシダイの魚体内においてγ-INF,mφの免疫防御機構の存在を検討するため、養殖イシダイの脾臓細胞をコンカナバリンAセファーロース4Bと共に48時間培養しその上清によるmφ活性化を検討し、以下の結果を得た。 1)Con.A培養上清で培養したイシダイ腹腔mφの貧食能と細胞内のペルオキシダーゼ活性の両機能は共に亢進していた。 2)イシダイCon.A培養上清を、ホ乳類でγ-INF失活処理とされている熱(56℃)或いは、酸(pH2)処理をおこなったところ、mφの活性化が消失した。 3)イシダイCon.A培養上清の腹腔mφ活性化の種特異性をマウス腹腔mφを用いて、検討したところ、マウスmφ活性化能を持たず、イシダイCon.A培養上清の種特異性が存在した。 以上のことより、養殖イシダイ脾臓細胞中のリンパ球は、Con.Aで培養するとγ-IFNを産生すると推察され、イシダイの魚体内でγ-INF,mφの免疫防御機構の存在が示唆された。 続いて、孵化直後の養殖イシダイを種々のβ-カロチン大量添加餌料(β-カロチン強化ワムシとβ-カロチン強化モイストペレット5,000μg/100g)で12カ月間飼育し、抗ウイルス性を示すγ-IFNを中心とした免疫増強機構を検討し、以下の結果を得た。 1)β-カロチン強化群のイシダイ脾臓リンパ球はコンカナバリンA存在下で対照に比較して高いγ-IFN産生を示した。 2)β-カロチン強化モイストペレット(25,000μg/100g)で12カ月飼育した群の羊赤血球を抗原とする抗体産生は、β-カロチン大量投与群が無添加の対照群より高かった。 3)β-カロチン強化群の腹腔mφの不活化酵母に対する非特異的貧食能は対照群より上昇していた。 3)両群の飼育期間中のヘマトクリット・ヘモグロビン・血清蛋白値に有為な差は認められなかった。また、大量投与に伴う阻害等は認められなかった。 以上のことから、イシダイ養殖にβ-カロチン大量添加餌料を用いることで、ウイルスなどの感染症に抵抗力のある魚を生産する方策が提示された。
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