1.ワムシの両性生殖・交尾機構 形態と増殖特性が異なる本種の5株を材料とし、雌雄間の両性生殖・交尾頻度を株内と株間で求めると共に、株間の遺伝的変異の定量を行った結果、従来同種とされた本種のL型、S型間には生殖隔離が存在し、既報のアイソザイム分析、核型分析結果と併せると、別種と考えるべきことが分った。また、新タイプと考えられていた熱帯産の超小型ワムシは従来のS型と同種であることも分った。休眠卵形成を実施するためには複数の培養株を混ぜないことが重要で、これにより、交尾頻度を高め、効率的な休眠卵形成を行わせることができることが分った。 2.間引き培養方式を用いた休眠卵量産 ワムシ休眠卵の大量生産を効率化するため、これまでに開発したバッチ培養(飼育水を交換せず、短期間で終了)による生産に対して、間引き培養方式(ワムシを収穫しながら飼育水を交換する、培養は長期)を導入し、その効果を検討した。 0.5m3容水槽6面を用い、濃縮後連結したNannochloropsisを餌料として休眠卵形成に適した水温・塩分下で約20日間L型ワムシの培養を行った。水換えをしないバッチ培養を対照とし、2日に1回、および4日に1回それぞれ飼育水を交換した間引き培養との間で休眠卵形成の比較を行った単位給餌量当たりの休眠卵形成数は4日に1回水交換した間引き培養で最も多く(9万個/g(乾重))バッチ培養時の2.5倍になった。しかし、間引き培養では、ワムシ増殖を阻害する細菌が多く出現し(水換えにともなう培養環境の急変に起因すると推察される)14日目以降にワムシの増殖不良が一部の水槽で起こった。水槽内にフィルターマットを設置することによって、安定的な培養が可能となり、設置しない場合に比べて休眠卵形成効率も1.3倍になった。ワムシ抽出物の添加やバクテリアの添加効果を確認するには至らなかった。
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