本研究は釣り針回避学習魚の脳髄RNA注射による非学習魚への学習行動転移を目的としたもので、平成7年度には以下の研究成果が得られた。 約10日間の絶食で釣獲経験を学習し易くしたニジマス7群に釣獲によって釣り針怠避を学習させ、その脳のトータルRNAを非学習個体に注射し、その結果を釣獲試験によって評価した。その結果、3群では釣獲試験前の水槽順化の不足と急な水温低下による摂餌欲低下のために効果判定をできなかったが、他4群では生理食塩水注射の対照魚より顕著を釣らにくく、本研究の目的を達成できた。しかし、RNA注射の効果が短期間で消失することが問題として残った。 上記の他に、下記の基礎的知見も得られた。 ニジマスでは釣獲前の絶食期間が釣獲経験の学習に影響を与えることが明らかで、絶食期間が十日の個体は一度の釣獲経験を容易に学習してその後は釣られにくくなった。 テイラピア2種Oreochromis mossambicusとO.niloticusおよび両種の雑種の釣獲試験結果とアイソザイム分析の結果よりみて、釣られ易さの個体差は遺伝的支配を強く受けておらずに後天的に変化すると結論された。 釣り針回避学習は比較的長期間維持され、その期間はブルーギルでは21日以上、クロダイでは62日以上であった。
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