リュウキュウアユの種苗生産過程で、種苗センターで飼育した親魚には発生能のない異常卵(過熟卵)を持つ個体が数多く現われること、また自然河川(源河川)の天然のリュウキュウアユと種苗センターで飼育した親魚では、産卵期が異なることが明らかにされている。 本研究では、まず6月より12月まで人工光による長日処理(18L6D)を行いその後自然日長に戻した群(長日処理群)と、全期間を自然日長下で飼育した群(自然日長群)とを設けた。その結果、自然日長群は11月下旬に成熟に達したのに対し、長日処理群では1月下旬に成熟個体が現われた。また採卵に用いた親魚のうち正常卵を持つものの割合は自然日長群で39%であったのに対し、長日処理群では90%であった。以上の結果から、長日処理により高水温期の成熟を抑制し、成熟時期を遅らせることにより良質の卵が得られることが明らかになった。 次に産卵期の違いを成長と性成熟の関係から明らかにすることを目的に、実験的に給餌量をかえて親魚を養成し、体成長、生殖腺の発達、卵巣卵の発生過程及び卵数を調べ、併せて天然魚(自然河川群)から得られた結果と比較した。その結果、全長において、給餌率表に基づいて給餌した群(対照群)は、対照群の1/3量を給餌した群(給餌制限群)及び自然河川群より有意に大きく、生殖腺も対照群が他の群に比べて有意に大きかった。卵巣の組織学的観察の結果、対照群では他の群と比べて、より早い時期に卵黄形成期に入った。排卵個体数は、対照群が11月下旬から12月上旬に、給餌制限群では12月中旬にピークを示した。また対照群では、異常卵を持つ個体が42個体出現したのに対し、給餌制限群では1個体のみであった。 以上の結果から、給餌量を適度に制限することにより、天然のリュウキュウアユに近い成長と性成熟を導き、産卵適温の時期まで成熟を遅らせることによって、過熟卵の発生を防止できる可能性が示された。
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