1.有用なDNA標識は、個体変異の多い部位に設定できる。今回まず対象としたミトコンドリアDNAにおいては、多くの脊椎動物では、Dループ領域を含むコントロール領域で最も個体変異が多い。そこで、この部位を対象にして、新たに設計、作成したものを含むいくつものプライマーの組み合せを用い、PCR法によってその増幅を試みた。その結果、コントロール領域全域が容易に増幅できる、いくつかのプライマーセットを開発した。 2.また、通常のフェノール法以外に、より簡便なDNA試料の抽出法を検討し、イオン交換樹脂を利用した簡便な抽出法による試料からも、十分量のDNAが増幅できることを確認した。これは、多くの個体を対象とする今後の調査のために有用なDNA試料抽出法となる可能性がある。 3.さらに、非対象プライマーによる直接塩基配列決定法に加えて、放射性同位元素を用いずに、2本鎖DNAを試料にDNAシーケンサーと蛍光標識を利用して塩基配列を決定する方法を種々検討し、効率的な実験システムを確立した。 4.以上の成果を基礎して、両側回遊型アユの数個体につき、ミトコンドリアDNAのコントロール領域のほぼ全域の塩基配列を決定した。引き続き、琵琶湖産アユ、およびリュウキュウアユ集団の複数個体について、同領域の塩基配列決定を進めている。
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