1.付着水深および天然海域での成長:陸奥湾青森沖定点での1994、1995年の付着板調査の結果、水深10mで最も付着が多い傾向が認められた。陸奥湾における成長を5、10、20mの水深で1994年5月から18ヶ月追跡調査した結果、10、20mで殻底長径がほぼ同じ37mmに成長したが、水深5mではこれよりやや成長が劣った。越喜来湾に移植した当歳フジツボは、1年後には殻底長径(SL)が25mm、2年後には32mmに達した。1歳群(約34mm)は1年後にはSL39mm、2年後には42mmに達した。 2.成長に及ぼす水温の影響:SLが約7mmの当歳フジツボは、25、20、15、10℃の水温の順に成長速度が増大した。25℃では180日後には生残率が15%に低下した。SL23mmの1歳フジツボでも同様に低水温ほど成長が速かった。10、15℃では600日後でも生残率が95%以上であったが、20℃では45%に低下した。本種には15℃以下が適していると判断された。 3.陸奥湾における幼生の出現:表層プランクトン調査では、キプリス幼生は1月中旬にはすでに出現し、3月にはほとんど採集されなかった。キプリス幼生は西湾よりも東湾に多く出現する傾向が認められた。 4.幼生の飼育と摂餌速度:幼生の餌料には珪藻のAsterionella japonicaとThalassiosira nordenskioeldiigが適していた。飼育水温は10〜12℃、飼育密度は1〜2個体/lが適当で、キプリス幼生までの所要発生日数は最低18日であった。明および暗条件での飼育結果に差異はみられなかった。2l規模以下での飼育には通気攪拌が適していたが、20l規模の飼育ではプロペラ攪拌が適していた。A.japonicaを与えた幼生の植食速度は発生段階とともに増加し、II期では300細胞/個体/時間、最も植食速度が大きかったVI期では1700細胞/個体/時間を摂餌した。 付着基質:人工基質に対する付着選択性を調べた結果、ゴム、塩化ビニルに付着が認められ、廃タイヤ再利用の可能性が考えられた。
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